『昭和の店に惹かれる理由』(井川直子 ミシマ社 2017年)

 新譜と新刊を追ってきたつもりだが、この店の紹介に訪れた、井川さんから教えられて、本書を読んだ。著者は他ならぬ、取材に訪れた井川さんであった。
 とりあえず、日本の王様である関口一郎の店、「らんぶる」への取材記事のページを見た。前回のドナルド・キーンと同様、取材に先行する探訪、下調べが十分にされていて、井川さんならではの話が引き出されている。面白い。

 珈琲のことになると、関口さんも頭が回るらしい。というよりも、ドリップ方式を始めから採用していたことながら、そのドリップ器具も彼が開発したそうである。
 現在は紙のドリップだが、それは紙自体のクオリティーが上がったから、始めた。当初のネルドリップと同じ抽出になったという。しかも、そのネル布にも裏表があり・・・という具合。面白い。
 そして、彼が珈琲をドリップ(しずく)しているのを間近にしているように思えてくる。「本当のことは隠れやすい」(サンテ=グジュペリ)というが、良書も隠れやすい。大概、実用書はその類だが、本書のようにここまで珈琲を手に取るように伝える本も珍しい。
 他に、とんかつ屋、呑み屋、バー、鮨屋、割烹(かっぽう)、天ぷら、焼き物屋と味を尋ねての探訪は続く。いずれも、大変丁寧な取材である。
 当店でも、売ります。(1,990円 税は当店の負担)
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by ihatobo | 2017-02-23 05:26