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『さすらい』東山彰良(光文社文庫 2006→09年)

 この小説のポップ性は、様々に散りばめられているのだが、何と言っても主人公ふたりの丁々発止だろう。そして、前回述べたようにポップであるための思想が、この作品にはある。
 中上の場合は(非暴力)直接的行動であったが、この作品では“孤独”を突き詰める事で“自分がなくなっていく感じ”を実感しようとする、匿名性である。その為には、“高跳び”という海外への逃亡が必要だったのだろう。

 孤独→匿名には、死亡に至るバイオレンスが必然になる。だが私は、それを「せつない」(亘根涼介)とは思わない。店を日々運営しているだけで、嫌というほど切ないのだから、わざわざバイオレンスを求める必要はない。
 こんな時代なんだから、順法斗争でノンビリやった方が良い、と私は思う。

by ihatobo | 2016-10-27 09:50