『路上のジャズ』中上健次(中公文庫 2016年)

 前回紹介した「Shadows in the Night」のディスク・ラベルのデザインは、名門ジャズレーベルのラベルを模したものだったが、文学と音楽ということで言えば、ジャズと文学も因縁が深い。本書は中上健次の“ジャズ小説”である。というが、舞台がジャズ喫茶だから“ジャズ喫茶”小説といった方が良いかも知れない。

 そのジャズ喫茶の名はR。そこに、タムロする若者の青春小説である。しかし、時代設定が70年前後、例の日米安保条約の改正をめぐる学生・労働者の異議申し立ての最中である。そのなかで主人公らは、ひたすらジャズ(フリー・ジャズ)を聞く。
 それがスローガンではなく、直接行動であり、きっと状況を変えると信じている。本書には、ふたつのエッセイと中上の処女作「赤い儀式」が収められている。そして、文庫化に当たり、詩「JAZZ」短篇「灰色のコカコーラ」が独自に加えられている。

 加えて小野好恵によるインタビューがあり、中上の自作に対する解説にもなっている。彼は、自らの作品を小説としてのジャズ、と考えているようだ。
そして、サッチモもアルバート・アイらーも、マイルスもポップだと言う。ジャンル(手法)を越えた、こうした認識こそがポップだと私は考える。

本書は、こういう文脈で既にポップ・アートである。
手に取って、眺めてみてください。
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by ihatobo | 2016-10-26 10:21