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『モドナの領域』その2

 モドナという概念を喫茶店にあてはめれば、単子はひとりひとりのお客様であり、彼らが各々の予定で寄り集まって、ひしめいているわけで、モナドの領域は、私たちの店のことだ、とも言える。それは、いつ行っても誰かがいる(鶴見俊輔)場所であり、そこには「自由に」入退場できる。コーヒー代を支払えば、誰からも干渉されない。
 そこで「誰か」に逢ったとすれば、偶然であるばかりではなく、その後の進展によっては偶然か必然と転化する。それを運命の出会いとか言ってロマンに浸ることもできるが、何の物的保証もない。つまり、偶然性の真理にまで成熟させなければならない。努力が必要である。まずは胸襟を開かねばならない。

 この偶然的な物の真理を何よりも大切することが大事である。そこで、そのお客様の記憶に、そのイベントが残ることになるからだ。それが喫茶店の現実であり、質、量、関係、行為、時、場所などの諸要素が、喫茶店を成り立たせる、本質(エッセンティア)である訳だ。
 この本からは、実に様々な事を教えてもらった。それは単に知識を得たということではなく、私の持っていた力が、みるみる湧いてきた、ということだ。感謝、感謝である。

 以前に紹介したマイク・モラスキーの「吞めば、都」が文庫になっていた。こちらも店のことを扱っているので、併せて読んでみてください。ちくま新書から。

by ihatobo | 2016-10-12 10:35