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『モナドの領域』(筒井康隆 「新潮」10月号 2015年)

 まず本書タイトルを解説すると、モナドはライプニッツの用語で「単子」のこと。タイトルは、その単子がひしめき合っている場所という程の意味だが、その「単子」は単体といってもいいわけで、それが領域を造るとは、そもそも何か、というのが本書のテーマである。

 内容はさておき、スペインの諺(ことわざ)に「盗んだ木は森へ隠せ」というのがあるが、読み終わってみると、この諺が本書の内容ではないか、と思い当った。
 つまり、何らかの作品を造るからには、それ以前に感銘を受けたものがあるはずで、その滋養で作品を造ったわけだから、その作者は滋養を盗んだともいえるはずである。作者の能力にもよるが、出来上がったものが一本の木たりに得てれば、先行する著作品と肩を並べることが出来る。
 ということは、著作の森に出来上がった本が隠れていたことになる。この諺は、どのようにも解釈できるが、そのようにして、本作は一本の木足り得ているほずである。評判もいいし。

 何しろ、哲学、宗教から死体遺棄事件までが扱われているのだから。
 1934年生まれの筒井康隆の面目躍如たる快作である。
 参考資料も含めて、本腰を入れて読むことをオススメしたい。

by ihatobo | 2016-10-05 22:41