人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『漱石の思い出』(夏目鏡子・述 松岡譲・筆談1994年 文春文庫その1)

 夏目漱石といえば聳え立つ文豪だが、来年は生誕150年、没後100年の節目の年である。今から20年ほど前に、没後80年ということで、様々な催しがあったが来年は、それ以上に盛り上がるのだろう。本書は漱石の妻、鏡子に対する親族でもある松岡譲の筆録である。

 没後13年の後、このセッションは行われた。仏教でいう13回忌である。鏡子夫人は必ずしも仏教徒ではないようだが、亡き夫を語れるまでには、その時間が必要だったのだろう。現在でも、そのような大事に関して人は、その時間を必要とするのだろうと、私も思う。

 内容は、夫人の語る夫婦の生活の記録だが、夫の書くものの契機となったイベントや「思い出」を、当然、鏡子さんは共有しているし、そうした中から小説は書かれるものだから、漱石の作品のいちいちのモチーフが語られていて大変興味深い。たくさんある作品の中から『行人』を読んでみようと考えた。

by ihatobo | 2016-09-29 11:28