『漱石の思い出』(夏目鏡子・述 松岡譲・筆談1994年 文春文庫その1)
没後13年の後、このセッションは行われた。仏教でいう13回忌である。鏡子夫人は必ずしも仏教徒ではないようだが、亡き夫を語れるまでには、その時間が必要だったのだろう。現在でも、そのような大事に関して人は、その時間を必要とするのだろうと、私も思う。
内容は、夫人の語る夫婦の生活の記録だが、夫の書くものの契機となったイベントや「思い出」を、当然、鏡子さんは共有しているし、そうした中から小説は書かれるものだから、漱石の作品のいちいちのモチーフが語られていて大変興味深い。たくさんある作品の中から『行人』を読んでみようと考えた。
by ihatobo | 2016-09-29 11:28