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『ことり』(小川洋子 朝日文庫 2016年)

 日本でいう “超能力” のある母親と、その娘たち、という「家族物語」を読み始めた。タイトルは『モッキンバードの娘たち』で、6人の霊たちが、各々に霊力を発揮する筋立て。
 モッキンバードはマネシツグミと訳されるツグミで、モノマネをする中型の鳥。英語のモックはあざける愚弄する意味で、命名の理由は大体 想像できる。
 しかし、本文300ページ超の長編なので、読み切ったら紹介するとして、鳥つながりの本書から始めたい。この物語もそうだが、ある動物(鳥類)がカギになる物語は読み始めると、しばらくして “ ははぁーん、こいつがナゾを解くポイントだな ” と勘づくものである。
 恋愛小説における主人公に想いを寄せる隅っこにいる人物が、物語の進行のなかで、ついには主役となってしまうようなものである。しかし本書は、そのカタチにはハマっているものの、一言でいえばアザトイ。

 つまり、小鳥が止まる木の枝はあっても葉や巣が存在しない。本文中の主人公は、カタチ通り消えてしまって、隅っこにいたはずのメジロが残り、寂しい幕切れである。なるほど、本書カバーは木の枝にメジロが一羽と物語に登場したグッズらしき物が吊るされている。
 手慣れた文の流れも、そうやって考えると、歌に関する見事な考察があるものの、大変寒々しい。

by ihatobo | 2016-03-17 18:02