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『お金がなくても平気なフランス人 お金があっても不安な日本人』(吉村葉子 講談社文庫 03→07年)

 フランスに住んで久しい(20年)著者が、一般の市民に「今、欲しいものは?」と尋ねたところ、「愛」と答える方々が、ほとんどだという。
 日本人である著者が、そう聞かれたら向と答えられるかを考えたところ「やはり、お金」だろうと著者は述べる。私は、そう尋ねられれば、"静かで平和な生活"と応じるだろう。というのも、私の生活がお金と愛(憎)に溢れているからで、何とか静かな生活を送りたいと日頃、願っているからだ。

 しかし、冷静に考えれば"静かで平和な生活"のためには、お金も愛も必要なわけで私の場合、無理を承知で充分なお金と気にならない愛の両方が欲しいのだ、という事になる。
 贅沢な話ではないと思うが、本書には、その方策が随所に述べられている。いわゆる歳時記の体裁を彩りながら、あたかも私小説の如き物語を感じさせる文である。

 あとがきによると、90年初頭のバブル崩壊に伴い本書が文庫化され大ヒットした、とあるのだが、それは著者にとって嬉しいことだが、私の価値は本書の内容にある。タイトルのように「お金がなくても」私は平気だが、「お金が」儲かった著者は不安に陥りなかっただろうか。

   それは、平気な私のヒガミだろうか・・・   

 人の死について最後に書かれているのだが、他人の事はどうでもいいのが、死ぬのは他でもない私なのだから、と。
 しかし、そこまで考えることはない。役に立つ知見が、たくさんあるのだから。

by ihatobo | 2015-10-26 10:00