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『女歌』(中島みゆき 新潮社 1986年)

 時代を振り返る季節が、またやって来たようで、1986年の中島みゆき「女歌」を読んだ。この本も積読んで、何時、入手したか覚えていない。巻末の自社広告を見ると、どうやら第三エッセー集のようである。
 ちょうど中頃、「フール・オン・ザ・ヒル」(片岡義男・訳)に目が止まったので、その章を読み始める。彼女のエッセーの構成は、身近雑事をつらつらと述べながら、これではまるで、あの歌詞のまんまじゃないのという形式で、結びに歌詞が掲載されている。
 歌詞が終わりまでゆくと、前半フリのオチを数行、書くという。「起承転結」定石通りである。しかし、この歌詞の引用をやると、著作物の二次使用料が当然かかり、商業ベースでない場合は大体そのものではなく、それと分かる様な書き方をするのがフツーであるが、小規模出版では、その工夫も意味はない。しかし、少部数だからこそ可能なことがあり、それで資金を支出するか個性を際立たせるか、どっちもどっちである。

 ともあれ、この時期に こういう社会意識を彼女が持っていたことが、本書から伺える。冒頭の6行に、その時期のビートルズと時代、そこに遅れてやって来た中島が何と思ったか、端的に綴られている。
 「いたよ、こーゆー女」という訳である。その女が出会った男・M なのか女のか、その彼らの眺める社会が、この章から伺える。その彼らを、そっと寄るよーについて回っていた、もう一人のM ―― 街には、ビートルズが流れていた。
 しかし、この時点でビートルズは、いない。とっくに解散してしまった。そんな話を中島が、作り上げたのかも知れない。

by ihatobo | 2015-07-29 09:44