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『般若心経』(玄侑宗久 ちくま新書 06年)その2

夕方以後は不安だが、日昼はようやく暖かくなって来た。
通勤途上の批把も、花がほころび実を結ぶ頃合である。
上衣は、セーターは、と迷う出掛の時刻が過ぎ去る春である。

「宇宙と一体になった」ように感ずることがある。というのが『宇宙論の神』であったが、それは「事実」である、という記述が仏典にある、というのが『般若心経』であった。
それを「梵我一如」と便述する、と。
それらの事情は、前回の『BIRD』の主人公チャーリー・パーカーの言動と同様に、パラドクスのこみ入り、複雑さと、同等である、と私は考えている。
しかし、般若心経も、元々がサンスクリット(パーリ)語の漢訳(音写)であり、それが更に日本語(音)に訳されて、あの私達が知る”読経”になっているから、その点でも更にこみ入っている。
ともあれ本書は、心のわだかまり、障碍を取り去る便法も述べられており、その章句としてはよく見る「色即是空、空即是色」の背景の詳述は圧巻である。
それでも、私たちパンピーにしてみれば、その境地に至っている「善男人、善女人」の集合が作り出してしまう、この国のメンタリティ(心性)には私は組したくない。

”訳本”として最善である、と考えるが、半端に読んではならない、とも思う。
心にわだかまりや障碍をストックしておくのも、店を運営する身としては、必要だからである。

シャルパンティエ、ということもあるし。

by ihatobo | 2014-04-16 21:29 | 本の紹介