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『父・こんなこと』(幸田 文 新潮文庫55年)

 本書は『鉄の棺』(鈴木 寛 53年)に寄せた長女・幸田文による父(露件)の見取りの日記風エッセーである。私も先年、父を見取っているので、1ページを読むたびにヘトヘトになった。正確な記述だと思う。
 元々、モーダン・エイジの女性による作品に興味を持ったのは、その「近代」社会に、日々、日常(衣・食・住)をどのように彼女たちが対処したのかを、うかがい、知りたかったからだ。
 それは終始できなかった私自身の母親の日々、日常を探りたかったからでもある。
父(露件)を仰ぎみて育った著者とは、色合いは異なるものの、その視界は同じであった。
 その「隔り」が倒れ、ふせっている。行を追うには「勇気」がいる。「幼い恐怖」で押し切らねばならない。
 著者はこの年、短編・長編を書き上げ、作家としてデビューする。

by ihatobo | 2014-02-21 19:47