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『昆虫という世界』(日高敏隆 74→92年 朝日文庫)

 中古品はCDに限らず、全てが一度はヒトが買った品物である。その前提に例外はあるものの、「コレ欲しい」、と誰かが買ったという事実は、決して蔑ろにできない。ただ、その例外というのは税制など、主に生産者、あるいは、取り次業者、そして書店、レコード店が、前二者から買い取った品物が、資産として計上されるために、ダンピングしてでも中古市場に出してしまう。
 ここにも例外はあるものの、この場合は新品である。(シールドされている場合さえある)
 海外では、この税制上の問題と、日本のように再版価格維持制度がないために、在庫(資産)処分による“ダンピング”は、週単位で行われる、という。
 詳しく知りたい方は税制に関する実務書を見れば分るが、中古品は、基本的に一度は「コレ欲しい」と消費者が商品価値を認めたものであることを、ここでは押さえておく。
 ここから先が楽しいのだが次回に。
 さて、今回は『気象で読む身体』(加賀見雅弘 講談社現代新書)その2である。
 どちらが先かは措いておくが、天候が変われば昆虫が、昆虫が変われば、鳥や小動物、あるいは細菌、微生物のいわばシフトが変わる。
 それらの生活環境の変化による私たちの身体の複雑な変化を、この本は扱っている。
 ならば、という事で、やはりずっと積んでおいた『昆虫という世界』(日高敏隆 朝日文庫)を読んだ。
 タイトルにあるように、昆虫、という世界が、ここに記述されている。
 つまり、人間の視点から観察した昆虫の世界、ではなく、日高は観察者というよりも、昆虫になって生きている奇蹟を、喜びを伴って記述している。
 昆虫の色彩がその機能を果たす、ことを、「美しいものには毒がある」という人間のコトバに置き換えている。
 他にも随所にこの手の置き換えがあり、読んでいる私が昆虫の世界にいるように実感できる。(「虚偽と真実」)
 私のコトバでは知的が昆虫にあるようである。法と秩序もあるし、メスによる配偶者選び、も私には合点がいく。(「愛と死」)
 他にも、昆虫における「時間」、「空間と社会」、と魅惑的な章タイトルが並ぶ。ゆっくり読もう。
 初版は1974年、朝日新聞社。
 ところで、私はアイスクリームが好物だが、今年は年を越えても毎日食べる。私の内的条件によるのか、環境の為なのか。シャーベットくらいなら自分でも造るのだが……
  

by ihatobo | 2014-01-09 23:31 | 本の紹介