人気ブログランキング | 話題のタグを見る

『貧乏神と福の神』(水木しげる 10年、集英社)

 いつの回だったか『黒猫』(エドガー・アラン・ポゥ 集英社文庫)を紹介した時に、もう大人なんだから怖がらずに全行を読もう、と書いたのだったが、本書を読み終えてそのことを想い出した。
 水木しげるは、私たちの先行世代で、既に大家としての地位を確立していたが、いま読んでみると新しい。
 不可解や不思議を「棚に上げて」、思うことと事実の間をフィード・バックしながら、私たちの日常は進行している。
 しかし、時に、その不可解や不思議がその日常に姿を現して私たちを驚かす。
 親や先輩たちが「迷信」のコトバを使って、繰り返し否定していた“現象”の驚きはこの妖怪の仕業だった。
 つまり、それは近代の物言いである。
 モダニストである水木の作品がもたらす驚きはやはり“永遠”である。

by ihatobo | 2013-06-25 05:49 | 本の紹介