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『ビブリア古書堂事件帖 4』(三上 延)

本作品がシリーズになったのは知っていたが、既に4作目である。
新聞の新刊紹介が私の主な情報源なので、本書を教えてくれたのは
店のスタッフである。本作も一気に読んだ。面白い。
前半がやや解説的で読み飛ばしたが、後半はグイグイ引き込まれる。
そういえば、語り手である大輔クンと栞子さんの
ほのかな恋心の行方は?という興味が、第一作の要素であった。
その恋心は、本作でどうも成就されそうな展開になっていて、ホッとした。
 しかし、本作のメインテーマは、江戸川乱歩による
匿名性、多重人格といった近代人の心理状況の記述である。
 それは偶然でもあるが、前回の『不穏の書.断章』
(フェルナンド・ペソア)のテーマと重なる。
前回作が、破滅の危機を掠すめながら、それでも断片的に
書き記した行為だとすれば、乱歩もそれを知りながら
物語を宙吊りにするために、奇想を練り上げたのだろう。
 やはり、両者とも、書き記しておくべきだ、という確念を
持っていたに違いない。
 本作の『ほのかな恋心の行方』も、破綻の可能性を含んでいるかも知れない。
乱歩による「うつし世はゆめ よるの夢こそ まこと」が度々引用されている。

by ihatobo | 2013-03-18 22:14 | 本の紹介